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〒772-0051 鳴門市鳴門町高島字北270

『EM活用』地域住民と共に環境学習

作成日:平成20年1月6日

徳島県鳴門市鳴門西小学校

第23回時事通信社「教育奨励賞」努力賞受賞校
徳島県鳴門市鳴門西小学校


 徳島県鳴門市立鳴門西小学校(岩佐財三校長、児童数二百七十九人)は、地域住民との協力でEM(有用微生物群)を使った環境学習に取り組んでいる。その活動は、学校周辺の水路の浄化や給食の食べ残しの堆肥化、堆肥を使った花いっぱい運動、塩素材を使わないプール清掃、トイレの消臭など多岐にわたっている。同校は、地域住民の環境改善活動の拠点となっているだけでなく、市教育委員会を通じて市内の小中学校にも取り組みが波及している。
 同校は一八七四年に創立した歴史のある学校である。校区の鳴門町高島、三ツ石地区は、鳴門市の北端に位置し、かつては塩田による塩づくりで栄えた地域だ。江戸時代から始まった塩業は、昭和になって合同製塩組合が設立され隆盛したが、製塩法が潮の干満を利用する「入り浜式」から、ポンプでくみ上げた海水を蒸発させる「流下式」に変わり、続いて電気で海水を濃縮させる「イオン製法」による操業が開始され、一九七二年に塩田は廃止となり、埋め立てられて住宅地となった。塩田内への海水の取り込みや排水に利用された「水尾川(通称によ)」と呼ばれる水路が一部埋め立てられず、塩田の名残として現存している。
 同校の東側にもによが残っており、周囲を山や島で囲まれた「ウチノ海」と「小鳴門海峡」を結んでいる。塩田が廃止になった当時はまだ合成洗剤などが使われていなかったため、水質はきれいに保たれていたという。しかし、ここ十数年の生活様式の激変で環境は悪化した。によは、住宅から垂れ流しの生活排水やごみの不法投棄によって、ヘドロが溜まり悪臭を放つドブに変わり果てた。このによを復活させようと六年前、地域住民が立ち上がった。


EMによる環境浄化

 活動の中心となったのは、鳴門西自治振興会とNPO法人「ボランティア鳴門西」だ。同法人は、一九九八年十一月に「全国豊かな海づくり大会」が同地区の「鳴門ウチノ海総合公園」で開かれたのを機に、花いっぱい運動など地域の環境美化活動を目的に発足した。
 によを昔のように魚や貝が住む水路によみがえらせたいと考えた事務局長で鳴門市議の橋本国勝さん(六三)は、環境浄化に役立つEMに目を付けた。EMは、酵母菌や乳酸菌など有機物を発酵させる力を持つ複数の有用菌を含む液状の微生物資材。農業での土壌改良をはじめ、生ごみ処理、水質浄化などさまざまな分野で活用されている。先進地の視察に行くなどしてEMを入手し、培養したEM活性液をによに撒いたところ、悪臭が弱まったことから本格的に浄化活動を始めた。現在、同会は学校に隣接する公民館で、購入したEM原液に米のとぎ汁や糖蜜を混ぜて培養し、水で希釈して使用済みのペットボトルに詰め、住民に無料で配布している。
 同校での環境学習も同時期に始まった。橋本さんら同法人の会員が学校を訪れ、EMの効果やEMを活用した取り組みの紹介、EM活性液の作り方の講習を行った。
 「私が子供のころはウナギやチヌがいっぱい捕れた」「小学校では、によで水泳大会が開かれた」−。環境学習の講師として学校を訪れた橋本さんら年配の住民の昔話に子供たちは目を輝かせた。「によで泳いでみたい」「魚を捕まえたい」−子供たちの夢と思いが膨らんでいった。
 によの水質改善活動で児童たちはまず、学校前のによの様子を観察した。によに足を踏み入れると、堆積したヘドロのせいで底なし沼のようにずぶずぶと潜っていき抜けなくなった。ヘドロの悪臭は、EM効果で弱まったとは言え、洗っても何日間も取れないほどだった。
 児童たちは、不法投棄されたごみの清掃を行い、EM団子を作り投入した。EM団子とは、米ぬかなどにEMを入れて発酵させたEMボカシとEM活性液、米ぬか、土を混ぜ合わせ、団子状に丸めたものだ。団子にするのは、液体に比べ潮に流されず、ゆっくりと効果が現れるため、ヘドロの分解に力を発揮するという。
六月下旬の午後、同校でEM団子作りが行われた。六年生の児童と担任の教師、同会の会員ら約六十人が参加した。手で丸めて直径五センチほどの団子にするのだが、力を込めて丸めないとすぐに崩れてしまう。「何ごとも一生懸命せなあかんわ」と橋本さんらに注意を受けながらも、子供たちは地域住民と和やかな雰囲気で団子を丸めていく。一時間かけて約二千個のEM団子ができあがった。
 EM団子は陰干しにしておくと一週間で白いカビに覆われてきて二週間後にはカチカチに乾燥する。によに投入すると団子は少しずつ割れながらヘドロを分解・浄化していく。

 

海の公園づくり

 水質浄化に取り組み始めて三年後の二〇〇五年、EM団子の投入で少しずつ環境改善が見られるようになったによに「海の公園(海のビオトープ)」を作ることになった。六年生の児童が、魚の生育場所となり、水質や底質の浄化にも役立つ海草アマモを移植したり、石を積んで魚礁を作ったりするなど、生物が住みやすい環境づくりに取り組んだ。
 ヘドロに覆われていたによの底質は少しずつ浄化され、フグやメバル、カレイなどが姿を現し、アサリやカニも生息するようになった。児童たちは観察用のいかだをによに設置し、定期的に生物の観察記録を付けている。
 によに再び戻ってきた生物を飼育・観察するための大型水槽も校舎一階の廊下に設置し「鳴門西によっこ水族館」と名付けた。水槽には地域住民が捕まえてきてくれたグレやチヌなどの幼魚がゆうゆうと泳いでいる。
 給食の残飯の堆肥化は、環境委員会の児童が中心に取り組んでいる。昼休みに集められた残飯にEMを混ぜて専用のバケツに入れ、廊下脇に設置された棚に並べて保存する。数週間後には良質の有機肥料ができあがる。肥料は花壇や学級農園に投入され、ヒマワリやコスモス、カボチャ、ゴーヤなどの栽培に役立っている。通常の土よりも草丈や実が二倍ほどに成長するという。
 プールの清掃は、これまで塩素消毒剤を大量に投入してぬめりを取っていたが、現在は清掃の約一カ月前にEM培養液を投入しておくことで、ブラシでこすり、ホースで水を掛けるだけでプールの壁面や底面に付着したコケやぬめりはつるつるになるという。さらにEMを含んだ排水は、によを通って流れていく途中で増殖し、河川や海も浄化する。
 学校トイレの便器にも悪臭防止のために週一回EMを投入している。児童は環境学習で作った活性液をペットボトルに入れて持ち帰り、家庭でも排水口やトイレに流している。「環境をよくしようという意識が学校から家庭へ持ち込まれ、子供を通して大人の教育にも役立っている」と橋本さんは言う。
 鳴門市教育委員会は、鳴門西小学校の取り組みをモデルに、市内全小中学校(小学校十八校、中学校七校)を対象に、給食残飯のEMリサイクルの実施を決めた。現在、小学校十三校と中学校三校で継続している。市教委では、「自分たちで育てた作物を食べることで好き嫌いが少なくなり、食べ残しも減るなどの効果が現れている」としている。またEMを利用したプール清掃も小学校九校が実施している。
 環境学習の効果について林浩二教頭は、「地域の人々のおかげで自分たちがあるという意識が高まり、自分たちが地域を守って育てていこうという方向に向かっている」ことを挙げる。
 岩佐財三校長は、「子供たちには自分を大事にし、自分が関わる他人を大事にし、自分が生きる地域を大事にする自尊感情を持つ人間になってほしい」と願う。
 「きれいになったによでおじいちゃんたちと泳ぎたい」というのが児童たちの夢だ。地域住民とともに環境改善の活動を続けていけば、夢が実現する日は遠くないはずだ。
(寺沢健之=徳島支局)

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